【活】ささえる@こまえくぼ 団体向け講座「ボランティア・市民活動の安全と安心」を行いました。

5月8日(月)14:00~16:00

こども食堂やサロン活動などの飲食を伴う地域活動をしている団体が、安全に安心して活動をしていくために衛生面と保険に関する講座を行いました。

 

1 活動における衛生管理と運営上の注意点について    講師:佐々木英子さん(多摩府中保健所)

   店舗や学校給食とは違い、ボランティア・市民活動として行う小規模で頻度の少ない食の提供は保健所への届出は任意となっていますが、食中毒等を起こさないためにHACCP(ハサップ:アメリカで始まった衛生管理の方法)を参考に、活動の準備段階から活動後までどこに注意をしていけばいいのかを教えていただきました。手洗いや食材の殺菌など基本的なことでもあらためて気づきを得る点も多くありました。また、食中毒や異物混入の事例紹介も具体的で分かりやすく、原因と結果を知ることでリスク回避の参考になりました。

◇HACCP(ハサップ)…アメリカで始まった衛生管理の方法

マニュアル作成→実行→記録→マニュアルのブラッシュアップ
営業の場合は義務、ボランティア・市民活動の場合は義務ではないが、その考え方は参考になる。
提供者が健康であること。具合が悪い時はムリに行わない。家族が具合が悪い場合も注意する。

・健康チェック…健康状態の確認、手指の傷等の確認、身だしなみ(装飾品)などにも注意

・手洗い…アルコールだけでは除去できないウイルスもある。物理的に洗い流すことの効果は大きい。
     意外と多い洗い残しは親指、利き手が多い

・食材の購入…より新鮮なものを選ぶ。買いだめをしないで、使い切る。

・冷蔵庫…冷蔵温度が保たれていたか(開始前後)温度表示があるとよい。温度計を置いておくと安心。
     冷蔵庫の温度が高かった時の対応方法をあらかじめ話し合っておく。

・食材の洗浄…リスクある食材等意識を持って取り扱う。
       水洗いだけでは不十分な場合もある。熱湯や次亜塩素酸ナトリウムで処理するのが良い。
       参考(絶対ではない):50度洗い(熱湯と水を半々で)で菌が減少する。

 

多摩府中保健所管内での近年の事例

ボランティア団体が飲食店に弁当を委託した。その弁当を食べたボランティア100人中60人以上発症。
ウエルシュ菌(50度ぐらいで酸素がある状態を好む)作り置き物などが原因になる。
⇒調理後、鍋ごと置いて冷ましてから冷凍したが、常温で置いた時間が長かった。
     小分けにするなどしてすぐに冷やすほうが良い。事前に作ることはしない。

 

・食物アレルギーについて
 事前に準備すること、利用する人としっかりコミュニケーションをとること。
 提供者ができること、できないことがあるので、完全にアレルギー原因の食材を取り除くことは難しい。
 対応できない場合は対応できないことを正確に伝える。
 人により、同じアレルギー原因の食材を使った料理でも調理方法により違う場合がある。
 調理器具も別にしたほうが良い(器具にこびりつく場合がある)

 

◇東京動画…食品衛生についての動画も見ることができる
 1歳未満にはちみつは与えない。消化器系が整わないから体が対応できないので感染する。
 はちみつに含まれるボツリヌス菌は、熱に強く加熱してもなくならないので、加工品もNG。

 

 

◆質疑応答

・キッチン用消毒剤でも効果はあるか

 濃度や内容によるが、吹き替けるだけというものは信じないほうがいい。
 ウイルスは非常に小さいので、霧がどんなに細かくても隙間ができるので殺菌の効果はない。
 吹き替けて全体的に湿らせたもので吹くのが良い。

 

・カンピロバクターについて

 主に鶏肉などにいる。半生っぽい焼き鳥、鳥わさなどで食中毒が起きている。
 時間が経つと死ぬので、新鮮な肉ほど菌は元気。
 運動性があるので、中まで入り込んでいて表面だけ焼いても除去できない。
 低い確率だが、ギランバレー症候群を発症することがある。

 加熱前の肉を流しで洗うと、シンクに洗った水が飛び散る。まな板で切ると、包丁とまな板にも着く、スポンジにも着くなど、切る作業で色々なところに菌が広がる。
まな板を使わず切らずに調理できるのであればそのほうが良い。

 

2 安全に活動を行うために(ボランティア保険、行事保険) 講師:吉村崇さん(三井住友海上火災保険)

 活動者本人が対象となるボランティア保険と、団体が主催する行事に対する行事保険。どちらも、ボランティア・市民活動で起こる思わぬ事故によるけが、損害賠償責任などに対応する保険です。
ボランティア・市民活動といっても内容はさまざまあり、事故が起こるケースも一概にはいえません。小規模団体には毎回の行事保険の負担は小さくありませんが、それぞれがどのような場合に適応されるのかなども確認することができました。「保険」というと難しいイメージがあり後回しにしがちですが、繰り返し学ぶことで安心につながるのだと思いました。

ボランティア保険
傷害保険  偶然な事故
賠償責任保険  他人の生命や物を損壊した場合、施設や物を借りた場合に損壊紛失盗取など。
コロナウイルスの5類への移行により、コロナ感染による保険金支払いは対象外となった。


行事保険・行事保険(当日参加対応型)
参加者5名以上全員が対象。
当日参加型は当日に名簿作成すればよい。
宿泊を伴う場合は当日参加対応型ではなく、行事保険となる。
行事区分についてはa行事、b行事、c行事に分かれているが、毎年保険会社でリスク区分を算出するので一概に言えない。
区分表に載っていない活動についてはどの行事区分にあたるか問い合わせしてほしい。

 

◆質疑応答

・食中毒による事故は、過去どのくらいあり、保険金はどのくらい支払われたか。食中毒の原因が分かれば教えてほしい。
→支払金額3,000万円というケースがある。

 

・パンフレットで「保険会社は示談交渉はしない」「円満に解決するように相談に応じさせていただきます」と書かれている。相談に応じるとは具体的にどのようなことをしていただけるのか。
→賠償関係には示談交渉はない。保険会社同士の交渉はしない。
 しかし、必要な資料は何か、被害側に確認しておくことは何か、などのアドバイスや相手ともめていることへの相談などはできる。

 

・新型コロナが5類となった場合、傷害保険は支払いの対象となるか。
→ならない。

 

・食中毒の事故がおこった場合に製造物責任法が適応となるのでしょうか。
→代理販売などの場合、製造元が明らかに悪い場合は製造元に賠償請求できる。物を預かっている間や加工して提供する場合、管理期間については責任の所在がボランティア団体になるので賠償請求されることがある。

 

・ボランティア保険の基本コース・天災コースは全員が入る。その時にプランも同じでないとだめか
→はい。

 

・天災コースは、調理をしていてお湯をかぶった時にその原因が地震の場合、天災コースでないと支払われない
→はい。

 

・参加者の行き帰りの事故は、行事保険でないと補償対象にならない
→ならない。

 

・当日参加対応型は行き帰りの事故によるけがは対象にはならない。ということは、当日参加型はボランティア保険でまかなえる
→まかなえる。

 

・団体が主催者としておこなった行事・イベントで主催者側に責務がある事故(食中毒を含む)が起きたときに賠償責任が生じた場合、ボランティア保険ではなく行事保険の賠償責任保険で対応されるという認識だが合っているか。主催者側に責任がある事故の場合、活動者が加入しているボランティア保険で対応できるのか。
→主催者として賠償請求されるので、行事保険・行事保険(統一参加対応型)のほうが適切

 

・公共施設を利用して活動する場合、公共施設はどこまで補償する保険に入っているか。
→一般的には施設側で保険に加入している。施設管理上の事故等に対しては施設の保険で対応する

 

・各団体の個人を守るため、団体を守るためには2つ必要ということですね。
→そうですね。